日本に、真の意味でのIT企業はほとんど存在しない。IT技術を効率化の手段としてしか考えていない企業がほとんどだからだ。ITが持っている「新たに産業革命を起こし、世の中を変革できる力」を使い切れていない。それは日本独自のSIer文化が一つの原因であると思う。もちろん、それに甘えてきた各事業会社の姿勢もあるだろう。しかし近年この情勢が変わってきた。
これから就職・転職する人へ
これから人材は事業会社(製品やプロダクトを持っている会社)に流れる。抱え込みが始まる。SIerも生き残るために方針展開をするべき時が来た。SIerが潰れることはないだろうが、よりスキルを求められ時代になってくる。社内にいるSEは今すぐ行動を始めた方がよい。
ポイント
とにかく、今後10年、20年先を見据えて、勉強は続けて、技術を磨いて入れば自分の価値が下がることはない。危機感をもって自分を磨いておこう。
日本式SIerの問題点
それは、IT会社にSIerに所属するSEに技術がたまらないことである。
下請け、孫請け構造ばかりでプライムコンダクターたるSIerに技術やノウハウがたまらない。SEの仕事も表面的な管理のみで、現場で本当に使えるスキルを持っている人は別の会社の場合が多い。別会社なので、その人のコントロールが出来ず、次のプロジェクトに配置できなかったり、開発ノウハウが引き継がれなかったりといった問題が起きる。
これからSIerが生き残るためにはどうするべきか
情報が溢れている時代にシステム作りを外注することは悪手
事業会社(製品やプロダクトを持っている会社)が自社でシステムを作ることが出来ると、ユーザ要求に沿ったシステム、そして、素早い開発サイクルが出来るようになる。これからを担う会社はその可能性に気づき始めている。
まだ、システム導入・開発に際しSIerに仕事を依頼するだろうが、この点に気づいている会社は、その時の熱量に素晴らしいものがある。“自分たちがシステムを使うんだ。自分たちで良いシステムを作り仕事を改善するのだ。”という気概を感じる。
こういった状況が続くと日本独自に進化したSIerという業種はなくなるのではないかと考えることがある。少し前までは、こういった状況はなかった。SIerだけでなく、ITコンサル系と呼ばれる会社もそうである。
要は現在手を動かしてシステムを作っていない会社、プロダクトを持っていない会社、上流工程だけやって後は下請けに依頼して自分は管理(という名の口出しだけ)という人や会社は危機感を持った方が良い。
高いお金を出して、口を出すだけの業界の仕組みはもはや不要である。今後10年は大きなうねりはないだろう。けれど、30年後にはどうなるか。徐々に、きっとIT業界の構図が変わっていくだろう。
今までのイメージを持ったままこれからSIerに入る人はよく考えた方が良い。今までと同じ仕事をしていると、きっと後悔する。これから書くことを十分に理解して、仕事をして欲しい。しかし、それでも、私はSIerにチャンスがあると考えている。
これからどうすべきか
日本の企業もITの力に気づき始めている。日本式のSIerはどうするか。胡座をかいた、下請け丸投げをやめないといけない。そして、チャンスにしよう。
事業会社はシステムを自作するようになる。そこで、SIerが生き残る道は、やはりITスキルファーストでないといけない。そう考えた時、SIerは素晴らしい環境を持っている。ここでいうSIerはある程度の会社規模を想定している。
ポイント
- 事業会社より多い開発プロジェクト数・豊富な業界経験
- 大小幅広い開発規模
- 専門人材の宝庫
SIerは事業会社に比べて、日々が開発の業態だ。ここがチャンスだと考えている。ITスキルはどうしても経験がものをいう。それも難しい問題を解決した経験だ。SIerは常に開発サイクルを回している。
この開発サイクルに自社のSE社員を入れ、経験を積ませて、ITスキルを覚えさせること。そうやって日本有数、業界有数のスペシャリスト人材を育てるしか、SIerが生き残る道はないだろう。
そして、その人材が流出しないように、給料を上げるべきだと思う。事業会社の場合、どうしても抱えられるSEの数に限度がある。しかし、SIerはそれが可能である。
「SIerは上流工程だけ」なんて時代は通用しない
スキルを持たない人は、どんどん淘汰されるべきであり、そうなるだろう。世渡りだけが上手い人、人にやらせるのが上手い人は居なくなる。だって、効率が悪いから。
本当の意味でのプロジェクトマネージャーと技術者が求められる。ここでいう本当の意味とはITスキルがずば抜けているという意味だ。マネージャーだってITスキルが必要だし、そのスキルは最新化しないといけない。
これからのSIerは、丸投げをやめよう。チャンスを生かして、自社に技術が貯まるようにしよう。自分に技術を貯めるには、勉強しかない。会社の名前で仕事をする姿勢を改めて、自分の価値を磨いておこう。