社会人になりたての頃、私は文書を書くことに大変苦労した。相手に伝わる文書が書けなかったからだ。相手に伝わる文書なんて、それまで書いたことがなかったし、どうすればうまい文書が書けるのかが分からなかった。
SEという仕事は、WordやExcelを使ってシステムの設計書や仕様の説明書を書いたり、パワーポイントを使って営業活動をしたり、お客様に分かるようにシステム導入のメリットを説明したり、想像しているよりずっと文書を書いていることが多い。そのため、当初は相手に伝わる文書が書けずに苦労した。
そんな私でも、綺麗な文章、相手に伝わる文書を独学で勉強して、今では後輩たちの文書をレビューして、どうすればより良い文書になるか指摘する立場になれた。
相手に伝わる綺麗な文書を書くスキルは社会人が持つべき必須のスキルの中でも、案外周りから教わることが少ない。文書を書くことは小学生でもできるため、指導者から「学生の時にやっておけ」、「そんなことも分からないのか」と言われることが多い。
このページは、綺麗な文書を書くことが出来ずに困り、周りからも教わることが出来ずに、苦労している人や、どうすれば綺麗な文書を書くことができるのか方法を探している人に向けてアドバイスを書いている。
メモ
なおこのページでは文書と文章を以下の意味で使い分けている。
文書=Wordを使って作成した目的を持った文章の集まり。主張や目的があるファイル。
文章=一文。センテンス。
このページでは特に文書について記載する。
相手に伝わる綺麗な文書のチェックリスト
はじめにチェックリストを示しておく。
ポイント
- 主張が伝わるように文書の構造・順序を考慮したか
- 平仄をそろえたか(フォント、文字サイズ、文字幅)
- 読み手が文書を読んだ後にどうなっていれば良いか一言で言えるか
- 誤字脱字がないことを確認したか
- 接続詞の使い方があっているか
- 一文を短くしているか(華美な形容詞・副詞がないか)
- 図や表を入れて根拠を示しているか
これらの項目について、説明していく。
文書作りが苦手な人の特徴
相手に伝わらない文書を書く人は以下の特徴がある。こちらのもチェックリストとして活用してほしい。
ポイント
1.文書構造を理解していない
→ 文章全体に構造があることを理解していない。
2.フォント、文字サイズ、文字幅がそろっていない
→ ぱっと見た時に汚いため、内容が頭に入ってこない。信用されない。
3.相手の求めることを書いていない
4.日本語の品詞を使いこなせていない・接続詞の使い方が誤っている
私は文章を書くことが苦手だった
SEという職業は文書を書いている時間が多い。仕事が終わるまで物(システム)ができないため、説明資料や設計書を作ることが多いからだ。
そういった背景があるためSEに文書力があり、綺麗な文書を書くことが出来ると仕事がすぐ終わる。こちらの考えが相手(お客様等)に伝わり、相手も素早く理解、納得してくれるからだ。
けれど、綺麗な文書が書けないと、相手に仕様が伝わらず内容を合意できないため、仕事が終わらないということになってしまう。SEの残業が多いのはそういった、文書力の面も含まれていると思う。
ビジネスとしての文書力には、小説のような物語は求められていないし、感動するような文書が必要なわけでもない。ただ、主張が相手に伝われば良いのだ。けれど、多くの人は相手に伝わる文書を書けない。
ポイント
それは、自分視点で文書を書いているからだと思う。相手が何を求めていて(目的)、その人の前提知識はどれくらい(背景)で、文書を読んだ後にどうなっていることが理想(結果)なのか、を考えていないことが多い。私もそうだった。
おすすめの本は「誰も教えてくれない書くスキル」と「伝わるデザインの基本」
今では私も人並みに綺麗な文章をかけるようになった。それは、この本を読んで繰り返し実践したからだ。まさにダウンロードするように、綺麗な文書が書けるようになった。
そして、伝わるデザインの基本も相手に伝わる文書を学びたいなら必須の本である。フォントの使い方、色の使い方、文字のサイズ、間隔など初めて聞いた内容が沢山あった。ぜひおすすめした。
このページの多くは、この本を読んで、さらに私が実践した内容を書いている。復習としてこれらの本を読めば、相手に伝わる文書についてさらに理解することが出来るだろう。
文書構造を理解していない
「主張が伝わるように文書の構造・順序を考慮したか」
物語であれば、起承転結という型があり、ビジネス文章であれば、導入→主張→理由→結論という型がある。
論文であれば、序論→方法→結果→考察→結論→参考文献の方があり、
アフィリエイトブログであれば、導入→商品紹介・主張・内容→理由→結論という型がある。
文書には必ず基本となる文章構造がある。しかし、相手に伝わる文書を書くことが苦手な人はこの構造を無視している。構造間のつながりを無視して、勝手に順序を変えて書いている。
この基本構造は読み手の頭の中にも備わっている。次にこうくるだろうと相手は考えながら文書を読んでいる。主張が来たら理由の説明が来ると予測して、文章を読んでいる。
義務教育を受けて、長い時間をかけて社会に根付いた構造がある。相手に伝わらない文書を書く人はこの構造を無視しているため、相手からすると、内容や主張が頭に入ってこない、何を言っているのか分からないという風に思われてしまうのです。
こう来たらこう来る、だからこういうことが言いたいのだろうと読み手は予想しながら文書を読み進めます。小説は、期待を裏切るという手法がありますが、ビジネス文章は裏切ってはいけません。そこを間違えてはいけないです。
どうすれば良いのか?(解決策)
文書を書き始める前に、以下の順序で下書きをしましょう。
ポイント
- 文書構造を目次レベルで考える
- 次に各目次に、一言で主張を書いていきましょう。
- 目次間のつながりを考え、肉付けしていきましょう。
この一連の作業をした後、内容が理解できるか、話が繋がっているか確認しましょう。
メモ
読みやすさとは、初見でどこを見れば良いか判断がつくことも重要です。
日本語なら右から、英語なら左から。こういう風に文書を読み始める位置というのは決まっています。芸術以外で文章の読む方法を変えてはいけません。それは相手の負担になります。
フォント、文字サイズ、文字幅がそろっていない
相手に伝わらない文書を書いてしまう人は、文書内でフォント、文字サイズ、文字幅が揃っていないことが多いです。要素が揃っていないため読み手に負荷がかかり、読みずづらく綺麗な文書になりません。内容が頭に入ってきません。
どうすれば良いのか?(解決策)
文書内では以下はそろえましょう。
ポイント
- フォント
- 文字サイズ
- です・ます調の語尾
綺麗な文章、相手に伝わる文章はこれらの要素が揃っていることが最低限の条件です。こちらについては「Wordの使い方を説明した記事」を参考に。
相手の求めることを書いていない
「読み手が文書を読んだ後にどうなっていれば良いか一言で言えるか」
文書の目的と書いている内容があっていないと、相手に伝わる文書にはなりません。これは相手が期待していること、こうくるだろうという予測に対して、期待を裏切ることになります。
期待を裏切ると読み手は深く読むことを止めてしまいます。今読んでいる文書は探しているものではないと判断するからです。
どうすれば良いのか?(解決策)
文書を書き始める前に、この文書を読む人は何を期待して、読むのだろうか。と先に目的を決めて、文書を書くこと。テーマを決めて書くこと。
つまり、この文書を読んだ人は、読んだ後にどうなっているべきなのか。ということを自分の中で決めてから文書を書くこと。
ポイント
- 読み手は説明を求めているのか
- 読み手は納得したいのか
- この文書は手順の説明なのか
- 仕様が書いてあるのか
などです。文書を書くときには読み終わった後の結果を先に想像していなければいけません。
日本語の品詞の使い方に気を付ける
ここから先は日本語のお勉強になります。
ポイント
- 接続詞の使い方があっているか
- 誤字脱字がないことを確認したか
例えば、“そのため、だから”という接続詞をちゃんと順節で使っているか。“しかし、だが”などの逆説詞を適切に使っているかというところをチェックしましょう。
これらの接続詞があると、その後には大事なことが書いてあると読み手は構えます。そこに正しく自分の主張が書いてあるか見直しましょう。
読みやすい文字数で一文を切っているか
「一文を短くしているか(華美な形容詞・副詞がないか)」
ポイント
一文を短くすること。一文が長すぎると、読み手に負荷がかかるため、途中で読むことをあきらめてしまいます。そうなると、相手に伝わる文書とは言えません。
文書構造を正しくしても、誤字脱字がなくても、一文が長いと、何が言いたいのかあいまいになり、読み手の頭の中に内容が入ってこなくなります。長すぎる一文がないか最後に確認しましょう。
あと同じ観点で、代名詞をなるべく使わないようにすることも大切です。書いている自分は題名が何を指しているのか頭の中で理解していますが、読み手は以外と代名詞を理解できないことが多いです。代名詞はなるべく使わないようにしましょう。
図や表を入れて根拠を示しているか
テクニックとして、程よく図や表を入れることも有効です。根拠をぱっと見せる効果もありますが、意外に人は文字を読んでいません。
しかし、単純化された図は覚えています。例えば、チェックリストなんかも効果的です。文字だけだとどうしても相手に伝わりません。
最初に構造を考えた時に、ここはわかりづらいから絵で解説を入れようとか、グラフで根拠を示そうなど、最初に考えましょう。あとから図を足した場合は、効果的な文書が作れているとは言えません。
さいごに
困っている人の手助けになればと思って、内容を書きました。みなさま活用してください。